IEAT恩典

タイ工業団地公社(IEAT; Industrial Estate Authority of Thailand)は、IEATの運営・管理する工業団地に入居する事業者に対し、投資委員会(BOI; Board of Investment)の投資奨励を受けなくても、BOIと同様の恩典を与えている。

 

工業団地内は用途別に、「一般工業区」(GIZ; General Industrial Zone、以下「一般ゾーン」)と、「自由事業区」(IEAT Free Zone、以下「IEATフリーゾーン」)に分けられる。

一般ゾーンとIEATフリーゾーンに共通する恩典として、外国企業(外国資本が49%を超える場合および外国人株主が過半数を超える場合等)でも土地の取得が可能になるほか、外国人技術者・専門家とその家族の入国査証および労働許可(ワークパーミット)の取得が容易になる等がある。IEATフリーゾーンに入居する事業者に対しては、さらに機械、原材料などに本来課せられる関税や付加価値税の免除等、税務上の恩典も与えられている。

 

工業団地入居ゾーン別の恩典

一般ゾーン IEATフリーゾーン

(一般ゾーンの恩典に加え、以下の恩典を享受できる)

・工業団地内での土地所有の許可

・工業団地で働く目的のために、外国の技術者および専門家を引き入れることができる

・上記の外国の技術者および専門家の配偶者、扶養家族を引き入れることができる

・外国通貨の送金の許可

・一般ゾーン内で輸送、倉庫、トレーニングセンター、クリニックなどのサービス業を行うことができる

・上記サービス業を行うために必要な土地所有の許可

など

・製品を輸出することに関して、無条件の特権の付与

・商品の生産に使用される機械、設備、機材、原材料等に係る輸出税、輸入税、付加価値税、物品税について免除

・工場やビル建設に必要な輸入機械、器具、部品等の輸入税、付加価値税、物品税の免除

・生産もしくはサービス提供のために必要な製品、原材料を輸入する場合は、所有者の明示を求められない

など

(出所)タイ工業団地公社(IEAT)

 

「ワンストップ・サービス・センター」は、IEATと事業を行う際、関連する法律や規定で定められている手続き等を一ヵ所で提供できることを目的に設立された。

例えば、工場の設立が円滑にできるように、土地の購入や賃貸手続きから適切な工場建設場所に関する相談、工場設立の際に必要となる様々な認可および許可の申請、IEATとの工業団地の共同開発まで幅広く対応している。ワンストップ・サービス・センターが提供しているサービスは、下記のように広範囲にわたる。

・情報センター

ワンストップ・サービス・センターは情報提供サービスとして、タイ全国にある工業団地に関する位置、工場数、プロジェクトの進捗状況といった最新の状況や情報を提供する。

・恩典・許可・認可センター

ワンストップ・サービス・センターは、次のような工業団地における許可・認可の申請を受理し、与えることができる。

事業や関連活動への土地利用

建設許可

IEATフリーゾーンにおける保税許可

IEATフリーゾーンにおける物品の搬入・出許可

工業団地内の土地所有許可

外国人技術者・専門家および扶養家族に対する滞在許可や労働許可(ワークパーミット)

・工業団地開発業者の許可センター

工業団地エリアの宣言

基本計画(マスタープラン)の許可

公共施設やインフラ設備に対する建設計画の許可

土地の分譲

・関係する機関との連携センター

工業団地内における投資に関する相談を行うとともに、財務省(国税局、関税局、物品税局など)、商務省、工業省、労働省、BOI、銀行等の関連機関との連絡業務・連携を行い、手続きの簡素化と円滑化を図る。

・Eサービス、相談窓口およびコーディネーターサービス

土地の利用および事業運営に関するサービス

IEATフリーゾーンにおける保税許可に関するサービス

 

IEATとBOIとの恩典で異なる点は、まずBOIでは法人所得税の減免の恩典があるが、IEATにはないことである。

一方で、IEATではIEATフリーゾーンに入居する場合には、商品の生産に使用される機械、設備や原材料等に係る輸出税、輸入税、付加価値税、物品税についての免除の恩典が受けられるが、BOIでは生産に使用される機械、設備に係る輸入税は減免で、かつ原材料の輸入税免除は地域により異なる。

その他、IEATではワンストップ・サービス・センターで工場設立の際に必要となる様々な認可および許可の申請を一括で行うことができる。

IEATの恩典を享受すると同時に、BOIの恩典である法人所得税減免税も受けたい場合、IEATへの入居申請と併せてBOIの投資奨励も申請しなければならない。これまでタイに進出する日系メーカーの場合、BOI の認可を受け、IEAT管理下の工業団地に入居するケースが多かった。