IEAT工業団地と賃貸工場

タイの工業団地内には、工場建設のための敷地のほか、道路、中央廃水処理施設、変電所、洪水防止システム、上・下水道、通信など、工場稼働に不可欠な公共施設やインフラが整備されているほか、海港、空港およびその他の輸送センターへのアクセスも容易になっている。

また、住居、学校、ショッピングセンター、レストラン街、スポーツ施設、郵便局、銀行、ガソリンスタンド、そしてホテルなど様々な施設が整備されており、工業団地内で生活のほとんどが賄える。最近では、日本食レストランのある工業団地も増えてきている。

 

工業団地には、第1にタイ工業団地公社(IEAT; Industrial Estate Authority of Thailand)が造成・販売したものでIEATが運営・管理しているもの、第2に民間が造成・販売し、IEATが運営・管理しているもの、そして第3に民間企業が造成・販売・運営・管理しているものがある。

第1と第2が工業団地(Industrial Estate)の名称を用いているもので、第3はIndustrial ParkやIndustrial Zone、Industrial Land等という名称を使用している。第3の工業団地のケースでも、投資委員会(BOI; Board of Investment)の奨励を受けている場合には、日本語で「奨励を受けた工業地域」と表されており、インフラ等に関してもIEATが運営・管理する工業団地と遜色はない。

 

IEATが運営・管理する工業団地に入居する場合には、IEATに土地使用の申請を行う必要があり、タイの工業、技術、産業発展に役立つもので、団地の環境を阻害するものでなければ許可される。

入居申請に対する審査内容は、団地内での秩序の維持、公害防止の状況等が中心となる。特に、近年は環境対策が重視される。そのため、申請書は団地の運営にどのような影響を与えるかが中心となっており、使用電力量、廃水量、使用される原材料、環境保護などに関する情報が主となっている。

審査に必要な全ての許認可書類は、IEATのワンストップ・サービス・センターで一元化され、処理される。申請内容に不備がない限り、実働3日間、遅くとも1週間以内でスピード決済・交付されている。

 

 

IEATの管理する工業団地は、概ね下記のようなインフラが整備されている。

 

工場への給水 1日あたり最大供給量:合計8,000~50,000立方メートル。
排水処理 1日あたり最大処理能力:8,000~40,000立方メートル。
メイン道路 工業団地内の道路は、タイ工業団地公社の基準に基づいて作られている。道路の仕様は工業団地によって異なるが、幅16~18メートルで2~4車線となっている。
電力供給 タイ地方電力公社が各工業団地内に高圧変電所を設置し、三相22KVと115KVの電力系統が工業団地内の各土地に直結している。
通信 タイ全国の工業団地は固定電話、携帯電話およびインターネット通信のサービスを提供できる体制を整えている。
洪水防止システム 工業団地内の洪水を防止するために、U字排水溝を利用している。
天然ガスのパイプライン 生産プロセスに必要な燃料を供給するためにPPT社の天然ガスパイプが通っている工業団地もある。

(出所)タイ工業団地公社(IEAT)

 

なお、IEATの管理する工業団地でなくても全ての工業団地はタイ工業省の管轄下にあり、インフラや設備等に関しては一定の水準を満たしている。

 

工業団地への入居は、進出企業が団地内の土地を購入し、工場を建設する場合がほとんどだが、初期投資を抑え、操業までの準備期間を短くしたいという場合には、賃貸工場という選択肢もある。

2011年の大洪水後、賃貸工場のニーズが高まっている。賃貸工場は、アユタヤ周辺からバンコク南東のラヨーン周辺まで各地に存在している。

賃貸工場の場合、賃貸期間は3-5年間程度が多く、まずは事業を始めて、様子を見ながらその後の展開を検討することができるというメリットもある。

タイコン社は、工業団地内の賃貸工場ビジネスを活発に展開している。賃貸工場利用者のほとんどが外国企業で、そのほぼ半分を日系企業が占めている。

また、2006年6月にアマタナコーン工業団地内に開設された「大田テクノパーク」は、タイ最大の工業団地開発・運営企会社アマタコーポレーションが全面出資し、東京都大田区の中小企業向けに賃貸集合工場を運営している。工業団地に入居する日系メーカーにとって、日本の中小企業の優れた技術力が不可欠なため、アマタコーポレーションが開発を決めた。ここに入居している大田区の中小企業の1社は、タイでの成功を足掛かりとして中国への進出も果たしている。