タイ王国概要

タイとはどんな国か? この項では、タイを大まかに把握できる情報を集めてみた。他の項目を読んでいただければ、タイへの理解がより深まるはずである。

国名
タイ王国(Kingdom of Thailand)。タイ語では、プラテート・タイ(Prathet Thai)。

国旗
トン・トライロング(三色旗)。中央の紺は「国王(王室)」、白は「宗教(仏教)」、赤は「国民」を象徴している。1917年、ワチラーウット王(ラーマ6世)によって制定された。

国歌
「プレーン・チャート」。
毎日8:00と18:00に国歌が流される。曲が流れている間は、起立し、動かないこと。
映画館や劇場でも本編上映前、上演前に国王賛歌が流されるが、その際も起立する必要がある。

元首
プーミポン・アドゥンヤデート国王(ラーマ9世)、King Bhumibol Adulyadej(Rama IX)。
1927年12月5日生まれ、1946年6月9日即位。1988年7月に、チュラーロンコーン国王(ラーマ5世)の持つ在位42年22日間を更新し、タイ国王の中で在位最長記録を達成した。2006年6月9日には、在位60年を迎えている。
憲法に、国王は神聖不可侵の元首であり、国軍を統帥する立場にあるほか、仏教の擁護者である旨が規定されている。

政体
立憲君主制。2012年は、1932年6月24日の人民党によるクーデター「立憲革命」の80周年にあたった。
立憲君主制前の中央集権的絶対君主制は、チュラーロンコーン国王(ラーマ5 世)により形成された。同国王は1873年、有力貴族から歳入権を奪還した後、奴隷解放、12省の統治組織の確立などを展開し、立法、行政、司法の三権を国王に集中させた。
現在、上・下院の二院制で、上院は150議席、任期6年、下院は500議席、任期4年となっている(詳細は、政治概観の項目を参照のこと)。

面積
513,115平方キロメートルで、日本の約1.4倍。国土の大半を平野部が占めており、農地面積は国土の 40 %。
カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアの4ヵ国と、また海岸線はアンダマン海とタイ湾に接している。
76の県に分かれ、大きく中部、東部、西部、北部、東北部、南部の6つの地域に区分される。

人口
6,709万人(2012年7月現在)で、東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかではインドネシア、フィリピン、ベトナムに次いで多い。
1990年代以降出生率が低下し、現在の合計特殊出生率は2.0を下回っている。15~59歳の人口は2015年にピークを迎え、その後減少が見込まれている。タイでも社会の高齢化が始まっている。

民族構成
約80%がタイ族で、大多数を占める。10%が華人で、そのほかマレー族、クメール族、カレン族、ミャオ族、モン族、ヤオ族、ラフ族、リス族、アカ族など様々な民族によって構成されている。

宗教
人口の90%以上が仏教徒、そのほかイスラム教徒(5%)、キリスト教徒(0.6%)、ヒンドゥー教徒(0.1%)など。
憲法により信仰の自由は認められているが、仏教が実質上の国教といえる。国王は「すべての宗教の庇護者」と憲法で規定される一方、「国王は仏教徒でなければならない」とも規定されている。
タイ人の多くが信仰している上座部仏教は、僧侶と俗人の区別が明確で、約29万人ともいわれる僧侶は227の戒律にしたがい、日々厳しい修行に励む。4つの大罪は、「性交の罪」「盗みの罪」「故意の殺人」「虚言の罪」で、これらに違反した者は黄衣を剥奪されたうえ、教団外に放逐される。
僧侶は、働くことができないので、在家者の布施に頼る。全国に3万以上の仏教寺院が点在する。
男子は、一生涯のうち一時的に出家する習慣がある。出家の間は、戸籍を抜かれ、納税・兵役義務も免除される。
厳しい修行を行った者だけが救済されるという上座部仏教の弊害として、自己中心的な考えを持つ人が多いということが挙げられている。
イスラム教は、南部では多数派となる。南部では長年、タイからの独立を求めたイスラム系武装集団によるとみられる襲撃・爆弾事件等が頻発しており、日本外務省は注意を喚起している(詳細は、宗教概観の項目を参照のこと)。

言語
公用語はタイ語。
タイ文字は、中世クメール文字をもとに13世紀末に作られた表音文字である。42の子音文字と、32の母音文字があり、これらを組み合わせて音節を作り、5種類の音調によって発音される。
タイ南部では、タイ語が通じにくい地域がある。

首都
通称はバンコク(Bangkok)。行政上の公称は、クルンテープ・マハーナコーン。一般にはクルンテープ(天使の都)。
人口572万人で、首都圏面積は1,562平方キロメートルと東京都の4分の3。

気候
熱帯に属し、高温・多湿。バンコクのある中部と北部の山岳地帯、東北部の高原地帯、南部のマレー半島では気候が異なる。
季節は、一般的に雨季(5月~10月)、乾季(11月~2月)、暑季(3月・4月)の3季に分けられる。

年号
仏暦を使用。西暦に543年を加えると仏暦になる。西暦2013 年は仏暦2556年。ワチラーウット国王(ラーマ6世)によって制定された。

文化・国民性
王室を非常に敬愛し、国王・王妃の肖像画や肖像写真が、自宅、会社、商店、食堂などの各所で見受けられる。なお、刑法に不敬罪があるので、外国人であっても安易な王室批判などはしないこと。
タイの文化は、国民の9割が信仰している上座部仏教の影響を大きく受けている。カレンダーには満月・半月の印が書き込まれており、それらは仏日と呼ばれ、寺院や僧侶への功徳(ブン)をすると良い日とされている。功徳の実行例としては、喜捨・寄進、あるいは出家である。また、仏教行事をもとにした祭日もあり、陰暦で決定される場合が多く、毎年日程が異なる。
仏教とならび、タイでは精霊(ピー)信仰が根強い。ビルなどの一角には祠を建立し、毎朝お供え物をする。日本の神棚に近い存在ともいえる。
年長者を敬うという観念は教育現場でも徹底されているため、両親に対する敬愛の念は深く、また家族や一族を大事にする傾向が強い。